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  • 【23卒】大東文化大学文学部書道学科を卒業しました/学科の特徴・学べる内容などを紹介します

    【23卒】大東文化大学文学部書道学科を卒業しました/学科の特徴・学べる内容などを紹介します

    本記事筆者は、大東文化大学文学部書道学科を2019年4月に入学、2023年3月に卒業しました。

    そこで今回は、大東文化大学文学部書道学科への入学を希望している方、また書道学科がどのようなところなのか知りたい方に向けて、

    • 大東文化大学の書道学科とはどんな学科なのか
    • どんなことが学べるのか
    • 学科の雰囲気
    • 学科の良い点、大変だった点
    • 入試を突破するコツ

    以上の点を紹介します。

    2000年に新設された「大東文化大学 文学部 書道学科」

    大東文化大学の書道学科は2000年に新設された比較的新しい学科です。

    書道学科が新設されるまでは、書道をしたい人たちはおもに日本文学科・中国文学科に進学し、書道部に入部して部活動として書道に取り組んでいました。

    書道学科が新設されたことによって、大学の授業内容は書道に特化し、より書道活動に打ち込むことができるようになりました。

    大東文化大学 文学部 書道学科で学ぶ内容

    1,2年生の主な授業内容

    1,2年生の2年間では、書道の基礎的な技術・知識を身に着けることを目指します。

    実技の授業

    1,2年生では、半紙サイズで楷書・行書・草書そうしょ隷書れいしょ篆書てんしょの5書体すべてと仮名かなを習う授業があります。この2年間で、書道学科生として全ての書体を書けるようにします。

    入学前の時点では、すべての書体が書けなくても心配いりません。特に隷書れいしょ篆書てんしょについては書いたことのない学生が多いため、基本的な筆遣いや線の書き方から学びます。

    2年生からは漢字かな交じりの書・篆刻てんこくの授業もありました。

    普段の授業は半紙サイズですが、先生によっては期末の課題に半切サイズで書いてみようという授業もありました。

    また、高校時代についてしまった字のクセも、古典こてんを尊重した視点から修正してもらえます。

    中国・日本の書道の歴史を学ぶ授業

    実技の授業のほかに、中国・日本の書道の歴史を学べる授業があります。

    たとえば、蘭亭序らんていじょという有名な古典がありますが、書いた人の名前はなんでしょうか?
    -答え:王羲之おうぎし

    このような基礎的な知識を身に着けずに卒業してしまうと、「4年間なにしてきたんだよ(笑)」と笑われてしまいます。書道学科生として恥ずかしくないように最低限の知識は身に着けて卒業できるようにしましょう。

    そのほかには中国語や漢文などの授業もある

    書道に関する授業のほかに、中国語や漢文などの授業もあります。

    漢文は中高生時代にも習ったかと思います。基礎的なレ点からスタートするので漢文が苦手だった人でも大丈夫だと思います。高校生でしっかり勉強した人はまったく心配いりません。

    中国語は1年生と2年生の全期間で必修科目となっています。中国語は発音がとても難しいです。テストが難しく、単位を落とす人がたくさん出るので注意が必要です。4年生の卒業時にはほとんど忘れています(笑)。

    3,4年生の主な授業内容

    3,4年生の2年間では、ゼミに分かれてそれぞれ専門的なことを学びます。
    ゼミは書作しょさくゼミと書学しょがくゼミの2つに入ることになります。

    書作演習(書作ゼミ)

    3年生から書作しょさくゼミがスタートします。

    書作ゼミでは、希望したゼミに入り、作品制作に特化した授業が行われます。この授業で使う紙のサイズは、漢字作品の場合、主に2×8尺サイズになります。

    卒業制作に向けた作品制作もこの授業で行います。

    書作ゼミの種類は、
    行草書に特化したもの
    篆隷書に特化したもの
    仮名に特化したもの
    篆刻に特化したもの
    などがあります。

    自分の専門にしたい書体に精通している先生のゼミを選ぶ人もいれば、先生の人柄で選ぶ人などもいます。

    書学演習(書学ゼミ)

    3年生から書作しょさくゼミとはべつに、書学しょがくゼミもスタートします。

    書学ゼミでは、希望したゼミに入り、書道に関する学術的な授業が行われます。卒業論文の執筆もこの授業で行います。

    書学ゼミの種類は、
    中国の書道の歴史に特化したもの
    日本の書道の歴史に特化したもの
    書道作品の美しいとはなにかなどを追求する書道美学に特化したもの
    などがあります。

    書学ゼミの選び方も人それぞれですが、仮名の作品を書く人の場合は日本の書道の歴史を専門に、篆書の作品を書く人の場合は中国の書道の歴史を専門にした方がよいかと思います。

    ゼミ以外の授業

    書作ゼミ以外の授業でも、作品制作の授業はあります。漢字作品制作、仮名作品制作、漢字かな交じりの書、篆刻作品制作を学べる授業があります。

    書学ゼミ以外の授業でも、中国書道史、日本書道史、書道美学を学べる授業があります。

    また、中国の書論しょろんが学べる授業、日本の明治めいじ時代以降の近現代きんげんだいに活躍した書道家について学べる授業(近現代書道史)もあります。

    大東文化大学 文学部 書道学科の雰囲気

    男女比率

    書道学科(1学年約60人)の男女比率は、8:2の比率で女性の方がおおいです。どの学年も同じくらいの比率のようです。

    教室30人のうち、6人ほどが男性で、あとはすべて女性ということになります。

    数少ない男性陣、どんな人たちなんだろう?
    →書道学科の男性陣、高校時代は女性が多い書道部だった人がほとんどです。そのため女性社会を生き抜いてきただけのコミュニケーション能力は備わっているなという印象です。普段は協調性を尊重しつつ、時にはちゃんと解決に導いてくれます。バリバリの運動部タイプはあまりいないです。

    先生方の雰囲気

    書道学科の先生の男女比率は現在100%男性となっています。仮名の分野で女性の方がいらっしゃる年もありました。

    男の先生なので最初は怖いイメージがあるかもしれません。ちょっとしたことで怒られないかな、と身構えるかも。

    しかし、先生方はみんな仏さまかのようにとてもやさしい人ばかりでした。

    そのやさしさに甘えず、時おり身を引き締めなおして授業を受けることが重要になってきます。

    また、先生方は、「読売書法会よみうりしょほうかい」に所属している先生がほとんどです。「読売書法会」の最大の特徴は、 古典に根差した「伝統の書」を徹底的に追究する点です。

    大東文化大学 文学部 書道学科で取得できる資格

    教員免許状が取得できる

    大東文化大学の書道学科では、以下の3つの教員免許が取得できます。

    • 高等学校教諭一種免許状(書道)
    • 高等学校教諭一種免許状(国語)
    • 中学校教諭一種免許状(国語)

    ただし、これらの教員免許は卒業すれば自動的に取得できるというものではなく、申請をして教育心理学や教育実習など、書道とは関係のない授業も受講しなければならないので気をつけましょう。

    私の代では、1年生のころは学生約60人のうち9割ほどが教員免許取得に必要な授業を受けていましたが、4年生のころには7割ほどに減っていました。

    4年生では6月ごろに2週間または3週間の教育実習があるのですが、就職活動とも時期が被るためなかなかハードルが高めです。
    また、書道学科の先生とはべつの先生の授業もあるのですが、そういった先生方の授業は課題の提出が遅れたり、出席日数が足りなかったりすると融通やお情けはなかなか利きません。そういった理由で脱落していった人もいましたね。

    教員免許は比較的取得しやすい免許です。看護師資格は看護師国家試験、弁護士資格は司法試験に合格しなければなりませんが、教員免許は教職課程の授業を受けるだけで取得できます。(※資格の取得は簡単だけど、教員採用試験に合格するのは難しい)

    書道学科への入学を希望している方は、教員にならないとしても、教員免許を生かせる仕事もあるため、心に余裕があれば「一応とっておくかあ」的なノリでも取得しておくことををすすめします。

    そのほかの取得できる資格

    教員免許のほかにも、司書・司書教諭、博物館学芸員、社会教育士の資格も取得できます。

    これらの資格もそれぞれ必要な授業を受講する必要があります。

    教員免許にプラスして、司書・司書教諭、博物館学芸員の資格取得を目指している人は数人ですがいました。

    しかし受講しなければいけない授業がたくさんあって大変そうでした。本命である書道学科の授業を受けたくても、資格取得のために必要な授業と被っていて書道学科の授業が受けられなくなることもあります。

    就職は大事だから、就職先に困らないために取れる資格はとっておきたい!と言う人はがんばってみてもいいかもしれません。

    大東文化大学 文学部 書道学科に進学してよかったこと

    実技の授業が楽しい

    書道学科の授業は半分くらいが実技の授業です。

    実技の授業は、先生の一方的な講義ではないので退屈しません。高校の家庭科や化学の実験みたいな授業がたくさんあると思ってください。

    しかも、実技の授業は期末テストがないのでテスト期間がとても楽です!
    ほかの学科はテストや課題尽くしのなか、書道学科はテストが少ないのでそれほど苦しんでいる様子はありませんでした。ただ、中国語のテストだけはほんとうに難しいので注意が必要です。

    先生の存在が身近にある

    書道学科は1学年約60人、全学年約240人に対して先生は10人もいます。(ST比24)

    つまり、先生1人あたりの学生の割合(ST比)が低いということです。

    このST比が低い学科は少人数教育がしやすい環境にあるということです。

    参考までに、
    日本文学科は1学年約150人、全学年約600人に対して先生は14人(ST比42.85…)
    中国文学科は1学年約70人、全学年約280人に対して先生は9人(ST比31.11…)
    他学部の経営学科は1学年約365人、全学年約1460人に対して先生は30人(ST比48.66…)

    大東文化大学 文学部 書道学科に進学して大変だったこと

    大東文化大学 文学部 書道学科で大変だったことも紹介します。

    お金がたくさんかかる

    大東文化大学は私立大学のため学費がとても高いです。

    書道学科の新入生は、入学金の210,000円を含めて1,440,900円もかかるようです。
    大東文化大学の学費の確認はこちらからどうぞ。
    https://www.daito.ac.jp/campuslife/support_expenses/file/file_tuition01.pdf

    1回(90分)の授業で支払ってる金額をざっくり計算すると、
    1,200,000円(1年間の学費)×4年間=4,800,000円(4年間の学費)
    4,800,000円(4年間の学費)÷124単位(卒業に必要な単位数)=38,709円(1単位もらうための値段)
    1科目でだいたい2単位もらえるので、
    38,709円×2=77,418円(1科目の値段)
    1科目につき授業は15回行われるので、
    77,418円÷15回(授業の回数)=5,161円(1回の授業で支払っている金額)

    たった1回90分の授業だけで5,000円も払っているんです!

    そこからさらに書道用具代、校外への研修や作品の表具代(3,000円~10,000円)などもかかります。
    一人暮らしの方は家賃、光熱費、食費などもかかってきます。

    1,2年生と3,4年生でキャンパスが違うため移動が大変

    高坂駅から東武練馬駅まで
    高坂駅(東松山キャンパスの最寄り駅)から東武練馬駅(板橋キャンパスの最寄り駅)まで

    1,2年生と3,4年生で授業が行われるキャンパスが違います。キャンパス同士の距離がけっこう離れているため、一人暮らしの方は2年生から3年生に上がるタイミングで引っ越しをする人が多いです。

    1,2年生の東松山ひがしまつやまキャンパスと3,4年生の板橋いたばしキャンパスがどれくらい離れているのかと言うと、
    東松山キャンパスの最寄り駅の高坂たかさか駅から板橋キャンパスの最寄り駅の東武練馬とうぶねりま駅まで電車で約1時間もかかるほどです。

    部活動などでもう片方のキャンパスに用事があるときは、学校が終わってから1時間かけて通う必要があります。

    自己紹介で「大東文化大学で書道について学んでます!」がはずかしい時も

    これは人によるかもしれませんが、自己紹介の場面で自分が大東文化大学で書道を専門に学んでいることを話すのが恥ずかしい場面があるかもしれません。

    日本の書道の世界だと大東文化大学はけっこう有名ですよね。
    しかし、書道の世界から一歩でると大東文化大学の書道学科という経歴はまったく通用しません。

    集団面接の自己紹介

    就職活動の集団面接において、
    Aさん「青山学院大学○○学科のAと申します。」
    Bさん「埼玉大学○○学科のBと申します。」
    わたし「大東文化大学文学部書道学科のわたしと申します。4年間かけてがんばったことは、書道です。
    →面接官・周りの反応「え、いま書道学科っていった?書道部じゃなくて??大学でなにしてんの???(笑)4年間かけて書道極めるって、ちょっと変な人来ちゃった????」

    ちょっと大げさかもしれませんが、就職活動で大学で学んだことが活かせないということです。

    気になる異性との会話において、少しでも自分をよく見せたいですよね。
    相手「大学ではどんなこと勉強されてるんですか?」
    わたし「え~なんていうんだろ、芸術系ですかねぇ~」
    相手「え!芸術ってすごいですね!」

    「小説を読むのが好きで文学について学んでいます」「看護について学んでいます」「教育について学んでいます」と言えるのがうらやましく思えます。

    大東文化大学 文学部 書道学科の入試を突破するコツ

    「書道の実力」が重要

    2022年度の入試結果 ※クリック/タップで拡大

    大学のホームページにある入試結果データを見てみると、受賞歴がわかるものや実技試験でその人の実力が分かる入試方式で合格者を多く出していることが分かります。倍率も筆記試験のみの入試方式と比べて低いです。

    推薦型の入試では必ず書道作品を提出します。そのため、毎年推薦型での合格者数を多めにだしています

    入試結果データを見てみると、
    2022年度において、推薦型で定員が全部で27人とされていますが、実際の合格者数は37人も出しています。
    2021年度において、推薦型で定員が全部で25人とされていますが、実際の合格者数は42人も出しています。
    2020年度において、推薦型で定員が全部で25人とされていますが、実際の合格者数は35人も出しています。

    また、一般選抜のなかでも3教科の入試方式もおすすめです
    3教科のうちの1つが実技試験となっているため、合格者を多めにだしています。
    2022年度において、一般選抜(3教科)独自型と英語民間型合わせて定員が8人のところ、実際の合格者は30人も出しています。
    しかも、表の合格最低点を見てみると、独自型は179/300で、英語民間型は200/300とそれほどハードルは高くないのではないでしょうか。

    一方、書道の実力が分からない筆記のみの入試方式は厳しめに区切られています
    一般選抜(共通テスト利用)は7割以上、一般選抜(全学部統一)は8割以上とらなければ合格させてもらえないようです。共通テスト7割以上はかなりこわいです。
    他学科と比べてみても倍率も合格最低点も高くなっているので、この入試方式からはあまり合格を出さないようにしているようです。

    推薦入試の面接対策

    推薦入試で面接がありますが、どんな形式でどんなことが聞かれるのかを紹介します。ぜひ、本来の自分をアピールできるようにがんばってください。

    面接会場イメージ図

    面接以外にも試験がある場合は、面接はその試験のあとにあります。
    実技試験がある場合は、面接で実技試験のことについても触れられます。

    受験する人はその日だけで20人以上いるので1人1人じっくりと面接しているととても時間がかかってしまいます。そのため、面接は1つの教室で5か所ほどで行われます。面接官は書道学科の先生2人です。
    面接時間は10分15分程度かと思います。

    入退室の作法(ドアノックなど)はいりません。
    面接会場となってる教室の前に案内をする係の人がいて、
    「あちらの机のまえに座ってください」
    と案内されます。

    面接が終わればすべての試験がおわり、面接を終えた人から各自解散です。

    書道分野についての質問

    聞かれる質問内容を紹介します。すべての質問を網羅しているものではないのでご注意ください。

    • 自己紹介、自己PR、志望動機を30秒/1分以内でお願いします。
    • (事前作品提出の場合)あらかじめ机の上に作品が置かれていて、作品の説明。○○を臨書した。○○を意識した。など
    • (事前作品提出の場合)もう少しこうすればよかったと思う点はありますか。
    • (事前作品提出の場合)この作品を選んだ理由はなんですか。
    • (実技試験がある場合、問題用紙を渡されて)どれを書いたかと、気を付けたところ、反省点があれば教えてください。
    • 自分の専門分野(書体、古典)について教えてください。
    • 好きな古典はなんですか。その理由はなんですか。
    • 書道の良さは何だと思いますか。
    • 好きな書道家はいますか。その理由はなんですか。

    大学生活についての質問

    • 大東文化大学以外の大学の選択肢もありますか。またそれでもどうして大東文化大学なのですか。
    • 大学に入ってやりたいことはありますか。(おそらく書道関係の答え)
    • 大学に入るまでにやっておきたいことはありますか。(おそらく書道関係の答え)
    • 大学に入れなかったらどうしますか。(おそらく書道関係の答え)
    • この学科を卒業したあとは、どうしたいかありますか。将来何をしたいか。

    高校生活、その他についての質問

    • 高校生活での1番の思い出はなんですか。
    • 書道をしていて嬉しかったことはありますか。
    • 尊敬する人はいますか。
    • 書道以外に趣味はありますか。
    • 最後になにか言い足りなかったことはありませんか。(無いなら「無いです」でいい)

    書道の上達には道具も大切

    ここまで入試対策を紹介してきましたが、書道を上達させるためには道具も重要です。
    ちゃんとした筆で練習していないと、いつまでも上達せず、間違った方向に進んでしまうこともあります。

    もし、「お手本通りにうまく書けない…」や「筆が思うように動かない…」と感じる方は、普段使っている筆を見直してみると良いかもしれません。

    書道筆「紫乃」は、その書きやすさと使いやすさから、多くの書道愛好者に支持されています。
    筆選びで迷っている方は「書道筆『紫乃』の魅力:初心者からプロまで愛される万能筆の秘密」を参考にしてみてください。

    【最後に】大東文化大学 文学部 書道学科は純粋に書道を学びたい人、純粋に疑問を解決したい人におすすめします

    書道を専門的に学べる大学はいくつかありますが、大東文化大学 文学部 書道学科は、古典、伝統、歴史をリスペクトした書道が学べる学科としてはとてもおすすめです。

    ただし、書道の大会で賞を取れるようになるための学校ではありません。賞が欲しいのなら、その大会で地位の高い先生の教室に入ればいいのです。というか賞をもらっても何にもなりません。

    ただ歳をとった偉そうな、先生と呼ばれているおじさんが「こういう書道作品がいいのだ」と言っていることに疑問を持ったことはありませんか?「なんでこれがいいのですか?」と聞くと、「○○先生がこうしろって言っていたから」などと根拠のない思想を布教してこられた経験はありませんか?

    もしかしたら、あなたの書道に関する疑問が大東文化大学に来れば解決できるかもしれません。疑問をぶつけられて嫌な顔をする先生はいません!(先生へのリスペクトはわすれずに)
    そしてその先に、結果として書道の大会で賞を獲得できるようになるべきなのではないでしょうか。

    また、残念ながら大学で書道を学んでも今後の人生に直接役に立つ場面は少ないかと思います。そりゃあ、経済学部で経済の勉強をした方が社会人として賢く生きていけるのかもしれません。

    でも、そんな理屈で生きる人生なんてつまらない!自分が学びたいこと、疑問に思うことを解決したいんだ!という人に書道学科をお勧めします。

  • 書道作品の売買に使用された価格表/潤格(潤例)とは

    書道作品の売買に使用された価格表/潤格(潤例)とは

    潤格(潤例)とは

    書道において、作品の揮毫料の一覧表を潤格じゅんかくまたは潤例じゅんれいといいます。

    潤格の発生時期はわかっていませんが、潤格が使われていた事例は明末(1600年ごろ)から見られます。

    職業書画家にとって、揮毫料は唯一の収入源であり、自分の実力に見合っただけの収入を確保する必要がありました。

    潤格は作品を求める人を制限する役割も果たした

    近代の文章家の鄭逸梅ていいつばいは、潤格の意義を、
    「従来、書画家の売芸には、おおむね潤格が定められていて、これによって生計を立てているにほかならないのであるが、同時にまた、作品を求める人が多い場合、すべてに対応していては身がもたないが、潤格があれば何とか制限できるという役割もはたす。」
    と言っています。

    この「作品を求める人」を「制限」するため、潤格に基づいて揮毫料を取るという見解を言い換えれば、書画家の想いに答えるだけの揮毫料を支払おうとしない人たちが存在し、そのような人たちを締め出すために潤格が定められなければならなかったということになるのではないでしょうか。

    書画は技巧を大切にする工人(職人)的なものと、意趣を大切にする文人(趣味)的なものの2つに分けることができます。

    工人的な作品は他人に提供されることを前提としているため、制作には時間と労力がとてもかけられていることが作品を一目見ただけでわかるので、作品の売買にはあまり問題ありません。

    しかし、文人的な作品は自己の表現が目的のため、一息で作られることが多く、もし他人に与えることがあっても、作品へのアドバイスや友人関係を求めるという目的から無償であることが建前なのです。

    実は、潤格が発生した当時活躍した職業書画家のほとんどは、この文人的な書画を作っていて、知り合いならば無償で作品のやり取りをしながら、他人には作品を売ろうとしていたのです。

    つまり、書画家にとってはあまり親しいと思っていない人が作品を求めてきたような場合、無償か有償かをいちいち考えなければならないという煩わしさが生じていたのでした。

    とはいえ、揮毫料を相手任せにしてしまうと、一息に仕上げる文人的書画は人によって評価がばらばらで、中には書画家の想いに答えるだけの揮毫料を支払ってくれない人もでてきます。

    そこで、書画家が潤格を示し、一定の揮毫料をとることを前提とすれば、このような問題は一挙に解決し、円滑な作品売買ができるのです。

    潤格が流行った時期の、明から清にかけての書家はこのシステムにのっとって活躍していきました。

  • 【書道講師が実験】洗濯で落ちる墨汁は本当に落ちるの?普通の墨液と比較

    【書道講師が実験】洗濯で落ちる墨汁は本当に落ちるの?普通の墨液と比較

    洗濯で落ちる墨汁は普通の液体墨より圧倒的に汚れが落ちやすいです。書道講師として比較実験をしたところ、サクラクレパスの「洗濯で落ちる墨液」は大部分を落とせましたが、にかわや合成糊剤を使った一般的な液体墨はほとんど落ちませんでした。

    「書写のたびに服が真っ黒になって困る」という相談は教室でもよく受けます。今回は独自実験の結果と、服についた墨汁の落とし方、書道講師がすすめる墨液の選び方までまとめます。

    結論:洗濯で落ちる墨汁は普通の液体墨よりはるかに落ちる

    サクラクレパスの「洗濯で落ちる墨液」と、にかわ系の「書芸呉竹 紫紺系」、合成糊剤系の「玄宗 墨液」を同条件で比較したところ、洗濯で落ちる墨液だけが目に見えて薄くなりました。ただし完全に消えるわけではなく、青みがわずかに残ります。

    つまり「服を真っ黒にしないで済む保険」として優秀ですが、100%消える魔法ではありません。書道講師としては、練習用に洗濯で落ちる墨液、清書用は一般の液体墨という使い分けがおすすめです。相性のよい筆は書道講師がすすめる書道筆ランキングもあわせてご覧ください。

    製品タイプ洗浄後の汚れ
    洗濯で落ちる墨液(サクラクレパス)洗濯対応大部分が落ちた(青みがわずかに残る)
    書芸呉竹 紫紺系(呉竹)にかわ使用ほとんど落ちず広がった
    玄宗 墨液(墨運堂)合成糊剤使用ほとんど落ちず広がった

    なぜ普通の液体墨は服から落ちにくいのか

    普通の液体墨が落ちにくいのは、墨の粒子が極端に小さく繊維の奥まで入り込むうえ、煤粒子に直接効く家庭用洗剤が存在しないからです。

    墨汁が服から落ちない2つの理由

    • 水が溶媒なので繊維に吸収されやすい:墨汁は水ベースで、布が水と一緒に墨を吸い上げます。
    • 煤の粒子が極端に小さい:小さいほど繊維の奥に入り込み、洗っても出てきません。
    • 墨専用の洗浄成分がない:油汚れの界面活性剤や酵素のように、墨の微粒子に直接効く家庭用成分は存在しません。

    教室でも「何度洗っても落ちない」と相談を受けますが、原因は墨という素材の性質です。

    墨の粒子はどのくらい小さいのか

    墨の粒子の大きさは、固形墨で0.2~0.6μ、市販の墨液で0.05~0.25μほどです。液体墨が細かく作られているのは書き味と発色を均一にするためですが、その細かさが洗濯ではマイナスに働きます。

    墨の種類粒子径服についたときの落ちやすさ
    固形墨0.2~0.6μ液体墨より落ちやすい
    市販の墨液0.05~0.25μ非常に落ちにくい

    にかわと合成糊剤の違い

    液体墨の「のり」成分は、にかわと合成糊剤の2種類に分かれます。にかわとは動物の皮や骨から作る天然の接着成分、合成糊剤とは化学的に合成された粘り気のある成分です。どちらも煤の粒子が容器の底に沈むのを防ぐ役割を持っています。

    にかわを使った墨液は、にかわが固まらないよう大量の塩を加えており、この塩が筆を傷めたり表具の際に墨が散る原因になったりします。合成糊剤の墨液は伸びが悪く、筆についた墨が乾くとほぐしにくくなります。小中学校の書写では、磨る手間がなく価格も安いため、ほとんどの生徒が液体墨を使います。硬筆と毛筆の違いもあわせてご覧ください。

    比較実験:洗濯で落ちる墨液 vs 一般的な液体墨

    洗濯で落ちる液体墨と一般的な液体墨の差を検証するため、同じ布・洗浄液・時間で比較実験を行いました。使う墨液は「洗濯で落ちる墨液(サクラクレパス)」、にかわ系の「書芸呉竹 紫紺系(呉竹)」、合成糊剤系の「玄宗 墨液(墨運堂)」の3種類です。

    実験道具

    • 洗濯で落ちる墨液(サクラクレパス)…誤って付いた衣服の墨汚れが落とせる設計
    • 書芸呉竹 紫紺系(呉竹)…墨色は濃墨では紫紺、淡墨では紫系、にかわ使用
    • 玄宗 墨液(墨運堂)…墨色は紫紺系の純墨、合成糊剤使用
    • 布…綿100%、10×10cmに裁断する
    • 洗浄液…ぬるま湯100ml、漂白剤1ml、洗剤1mlを混ぜ合わせる

    洗浄液の配合はサクラクレパスのパッケージ指定に合わせました。漂白剤は色柄物にも使える酸素系漂白剤(酸素の力で汚れを分解するタイプ)が基本です。

    実験方法

    1. 布に5滴ほど液体墨をたらし、半日乾燥させる
    2. 乾燥させた布を洗浄液に2時間程度つけ置きし、そのあとぬるま湯で洗い流す
    3. 洗浄前と洗浄後の墨汚れの様子を撮影し、比較する

    実験結果

    洗濯で落ちる墨液(サクラクレパス)を布に5滴垂らして洗浄した後の検証写真。墨汚れがかなり薄くなりわずかに青みが残った状態

    洗濯で落ちる墨液(サクラクレパス):かなり薄くなりましたが少し青く残っています。日常的に着る服なら、ほとんど気にならないレベルです。

    書芸呉竹 紫紺系(にかわ使用の液体墨)を布に5滴垂らして洗浄した後の検証写真。墨汚れがほとんど落ちず広がっている状態

    書芸呉竹 紫紺系(にかわ使用):わずかに薄くなったものの、むしろ汚れが広がってしまいました。にかわの粘り気が繊維にからみつき、洗っても引きはがしにくいことがわかります。

    玄宗 墨液(合成糊剤使用の液体墨)を布に5滴垂らして洗浄した後の検証写真。墨汚れがほとんど落ちず広がっている状態

    玄宗 墨液(合成糊剤使用):こちらもわずかに薄くなった程度で、汚れが広がっています。合成糊剤も繊維への定着力が強く、落ちにくい結果でした。

    実験のまとめ

    洗濯で落ちる墨液は大部分を落とせるのに対し、一般的な液体墨はほとんど落ちません。墨液を変えるだけで、服汚れの悩みのほとんどがなくなります。

    服についた墨汁の落とし方【家にある物で対処】

    服に墨汁がついたら、家にあるもので対処する方法がいくつかあります。重要なのは、墨が乾く前にできるだけ早く処置することです。乾いた墨は繊維の奥まで入り込み、どんな方法でも完全には落とせません。

    墨汁がついたらすぐにやること(応急処置)

    • こすらずに「押して」墨を吸い出す
    • 汚れた部分の下に乾いたタオルを当て、汚れを移す側を作る
    • 水で薄めた中性洗剤をしみ込ませ、もう一度押す
    • 外出先ならティッシュでも代用できる

    こすると墨が広がって繊維の奥に入り込むので、必ず押すイメージで動かします。この段階で吸い出せる量が、その後の落ちやすさを左右します。

    酸素系漂白剤と洗剤でつけ置きする方法

    1. 40℃前後のぬるま湯に酸素系漂白剤と中性洗剤を溶かす(100mlに対して各1ml程度)
    2. 汚れた部分を浸し、2時間程度つけ置きする
    3. ぬるま湯で軽くもみ洗いする
    4. 普通の洗濯機で本洗いする

    洗濯で落ちる墨液を使っていれば、この方法でほとんど目立たないところまで戻せます。

    重曹を使った落とし方

    酸素系漂白剤がない場合は、重曹で代用できます。重曹とは炭酸水素ナトリウムのことで、弱アルカリ性の家庭用洗浄剤です。墨汚れに直接ふりかけ、少量のぬるま湯でペースト状に練り、歯ブラシで優しくすり込んで30分置いてすすぎます。子ども服にも使いやすいですが、ウールやシルクは避けてください。

    歯磨き粉でこすり落とす方法

    外出先で墨をこぼしたときに役立つのが歯磨き粉です。研磨剤と界面活性剤が墨の粒子を物理的に絡めとります。汚れに少量つけ、歯ブラシで優しくこすってぬるま湯ですすぎます。繊維を傷める可能性があるので、デリケートな素材は避けてください。

    時間が経った墨汁の落とし方

    すでに乾いた墨汁は、応急処置に比べて落ちにくくなります。ただしご飯粒法と酸素系漂白剤のつけ置きを組み合わせれば、ある程度は薄くできます。ご飯粒法とは、炊いたご飯をつぶして墨汚れにすり込み、米のデンプンの粘りで墨粒子を絡めとる伝統的な方法です。

    1. 炊いたご飯を5~6粒、墨汚れの上に置く
    2. 指でつぶしながら汚れにすり込む
    3. 少量の中性洗剤を加え、さらにすり込む
    4. 水ですすいだあと、酸素系漂白剤でつけ置きする

    完璧に戻すのは難しいので、汚れた直後に応急処置できるよう、洗濯で落ちる墨液を先に選んでおくのが現実的です。

    注意したい繊維(ウール・ナイロン・シルク)

    ウール、ナイロン、シルクなどのデリケート素材には、漂白剤や重曹は向きません。ウールとシルクはアルカリ成分でダメージを受けやすく、ナイロンは高温のお湯で変形することがあります。これらの素材は自宅処理を諦めてクリーニング店に相談するのが安全です。

    素材家庭での対処理由
    綿・麻つけ置きOK丈夫でダメージに強い
    ポリエステルつけ置きOK墨が染み込みにくい
    ウールクリーニング推奨アルカリで縮みやすい
    シルククリーニング推奨漂白で変色しやすい
    ナイロン低温で慎重に高温で変形しやすい

    子どもの書写では、汚れに強いポリエステルや綿100%の服を選ぶと洗濯のストレスが大きく減ります。

    書道講師がすすめる「洗濯で落ちる墨液」の選び方

    書道講師の立場からおすすめなのは、練習用と清書用で墨液を使い分けることです。練習用には汚れに強い洗濯対応タイプ、清書や作品には発色のよい一般の液体墨という組み合わせが実用的です。

    練習用:サクラクレパス「洗濯で落ちる墨液」

    練習用にもっともおすすめなのが、実験で使ったサクラクレパスの「洗濯で落ちる墨液」です。文具店で手に入りやすく、子どもの書写に十分な発色があります。練習中にこぼしてもすぐつけ置きすれば、服へのダメージを最小限に抑えられます。習字の筆の洗い方もあわせて確認すると、墨液本来の発色を長く保てます。

    清書用:にじみにくいタイプを選ぶ

    清書や作品提出では、発色の濃さとにじみの少なさが重要です。洗濯で落ちる墨液は服汚れに強い一方、書き味と発色は一般の液体墨にやや譲ります。作品提出や条幅の清書には、にじみにくい純墨タイプが基本です。清書の日は黒い服やエプロンを着るルールを決めておくと安心です。

    学校の書写ではどう選ぶか

    小中学校の書写は練習中心なので、洗濯で落ちる墨液を選べば家庭の洗濯ストレスを大きく減らせます。先生から指定がある場合はそちらに従い、自由選択ならサクラクレパスの「洗濯で落ちる墨液」が無難です。書写でよく問題になるのが筆の手入れで、習字の筆が割れる原因と直し方もあわせて確認しておくと子どもの筆が長持ちします。使いやすい書道筆を選ぶコツもまとめています。

    服を汚さずに書道を楽しむなら

    服を汚さずに書道を楽しむなら、自宅でじっくり練習できる環境を整えるのが近道です。お子さんの書道で服が真っ黒になる悩み、ご家庭だけで抱え込まなくて大丈夫です。SHODO FAMのオンライン書道教室では自宅から書道講師の指導を直接受けられるので、使い慣れた道具と汚れてもいい服装で安心して練習できます。

    特徴はコースごとに専門の書道講師がついていること。基礎から学びたい子と作品づくりに踏み込みたい子では、必要な指導が違います。得意分野を持った講師がつくので、お子さんに合った指導を受けやすくなります。通学の前にSHODO FAMのオンライン書道教室で試すのもひとつの選択肢です。

    よくある質問

    洗濯で落ちる墨汁は本当に完全に落ちますか?

    完全に消えるわけではありませんが、普通の液体墨より圧倒的に落ちます。書道講師として実験したところ、サクラクレパスの「洗濯で落ちる墨液」は墨汚れの大部分を落とせましたが、青みがわずかに残りました。日常的に着る服なら気にならないレベルまで薄くなります。

    時間が経った墨汁の汚れは落とせますか?

    乾いてしまった墨汁の汚れは、応急処置に比べて落ちにくくなります。ただしご飯粒法と酸素系漂白剤のつけ置きを組み合わせれば、ある程度は薄くできます。完全に元に戻すのは難しいので、あらかじめ洗濯で落ちる墨液を使い、汚れた瞬間にすぐ対処できるようにしておくのが現実的です。

    学校の書写には洗濯で落ちる墨汁を持っていってもいいですか?

    先生から指定がない限り、洗濯で落ちる墨汁を持って行って問題ありません。書写は練習が中心の授業なので、発色よりも汚れにくさが優先されます。作品提出や清書では、別途にじみにくい液体墨を用意しておくと安心です。指定がある場合は必ず学校の指示に従ってください。

    墨汁が服についたとき、いちばん最初にやるべきことは何ですか?

    いちばん最初にやるべきことは、こすらずに水で吸い出す応急処置です。汚れた部分の下に乾いたタオルを当て、水を含ませた布で上から押すように墨を移します。こすると墨が広がって繊維の奥に入り込むので、必ず「押す」動きで対処してください。この段階で吸い出せる量が、その後の落ちやすさを決めます。

    洗濯で落ちる墨液で書いた作品は、にじみやすいですか?

    洗濯で落ちる墨液は、一般の液体墨と比べると発色やにじみのコントロールがやや控えめです。練習や日常の習い事には十分使えますが、作品提出や条幅の清書には、にじみにくい純墨タイプが安心です。練習用と清書用で使い分けるのが、書道講師としておすすめする実用的な方法です。

  • 学校教育における書写・書道がおしえられない教師

    学校教育における書写・書道がおしえられない教師

    小さいころから書道教室に通っていた私が、小中学生のときの書写の時間にいつも思っていたこと…

    「先生、字下手だなあ」

    毛筆になるといつも威張っている先生が情けない字を書くのです。

    書道教室の先生ほどではなくでも、せめて生徒である私よりは上手に書いてほしかったです。

    今回は、「書写」ができない教師が増えている現状を書いていきます。

    「書道」教科の位置づけ

    戦後、GHQの政策により柔道・剣道など「道」のつく伝統文化が日本人の精神を形成しているとして、学校教育のカリキュラムから外されます。

    書道は当時の業界人の粘り強い交渉の結果、独立した教科ではありませんが、国語の中に「書写」として組み込まれることになります。

    ちなみに、柔道・剣道は平成24年度から中学校体育で必修化されました。

    「書写」というのはあくまで国語の中で文字を正しく、速く、読みやすく書くために習うものであって、美しさということはその目的から外れてしまっています。

    「書道」というものも、もともとは実用から出発したものですが、現在書道を学んでいる人や、高校芸術科書道を学んでいる生徒は、実用よりも美を追求することに力点を置いているのではないでしょうか。

    したがって「書写」として学ぶ習字と、「書道」として学ぶ習字との間にずれができてしまっています。

    さらに、「書写」では毛筆は硬筆をうまくに書けるようになるための補助手段として用いられています。力強くとか、元気よく書くというようなことは協調できない面があるのです。

    それでは義務教育中も書道を独立教科にしてしまえばいいと考えますが、難しそうです。

    他の教科はもっと時間を増やしたいと要望するし、書道関係者以外は毛筆書道の必要性を感じないからです。

    実用としては無用な芸術の時間を増やすほど余裕がないのです。

    書写指導の現状

    小、中学校国語教師の書写指導力不足が問題になっています。

    現在、小中学校国語科の免許を取得すれば当然「書写」も指導するようになるので、少なくとも毛筆書道の実習をしてきているはずですし、書道の理論、教育法なども勉強してきているはずです。

    しかし、現実には書道実習さえしていない人が小、中学校国語の免許を取得し、さらに高校の「書道」の免許まで持っていることがあると言います。

    このような教員が書写を教えられるはずもなく、まして今の中学校は高校受験の予備校化しているため、書写の授業が行われない学校が多いです。ちなみに中学校でも書写の授業は必ずしなくてはいけません。

    小学校では週1回、中学校では1年生が週1回、2年生は2週に1回、3年生では適宜てきぎという時間数が決められているみたいです。

    私が中学生の時は書写の授業はありましたが週1回もしていませんでしたよ?(笑)

    書写ができない教師のために充実する教科書

    昔の教科書はいわゆる「手本」だけが載っていて何の説明もないものでした。

    一方、今の教科書はあたかも昔の教師用の指導書のようです。

    手本にはいたるところに補助線があり、解説が充実しています。

    また写真が豊富で、用具の置き方、墨のすり方、筆の使い方、持ち方などにも写真が入ります。

    また、姿勢や書いているところを動画にしたものもあります。

    教える側がこれらについてはっきりした知識をもっていなくても、実際に書いて見せることができなくても、授業ができるように作られています。

    よく言えば、児童・生徒が自分から学習できます。

    わかりやすい教科書が開発されることは良いことですが、教員に教える力がないのは本末転倒ですよね。

    これからの学校書道

    最近、小学校1・2年生で水書用筆すいしょようふで(筆ペンサイズで水で文字が書ける)が活用されるようになりました。

    硬筆の点画は毛筆の書き方を参考に作られているので、その点画を手軽に練習できる水書用筆はとてもよい手段だと思います。

    しかし、教える側でさえ、筆で点画を正しく書ける人は少ないのではないでしょうか。

    文部科学省には、毛筆・硬筆を問わず書写を教えられる国語教員が育つような教員養成機関を大学に持たせ、免許取得ができるように監督してもらいたいです。また、指導要領にある「書写」の時間が完全に消化されているかも監督してもらいたいです。

    書道を持続可能にするためには

    一方、芸術科目である高校書道、展覧会書道の業界の先生方のなかでは以下のような意見もでています。

    もうずいぶん前から毛筆書道の必要性が減ってきており、書道人口減少に危機を感じています。

    日本の伝統文化である書道の人口を増やすために、小、中学校教育で書写としてではなく、芸術としての書道教育をするべきだという意見が出ています。

    「書写」と「書道」は求めるものが違います。

    「書写」の世界の人は、小、中学校の毛筆指導はあくまで硬筆練習の補助手段と考えています。

    「書道」が芸術科目として独立するためには、図工・音楽などに太刀打ちできるだけの理論的裏付けを持っていなくてはいけませんし、高校芸術科書道へ接続する道を見つけなくてはなりません。

    また、書道人口を増やしたいのなら、書道を続ける=師事して展覧会出品という書道界にも改変が必要です。

    書道は本来、自分1人でできるものなのですが、 書道教室で習うのをやめたから、展覧会入選をあきらめたからといって筆をおく人がたくさんいます。

    競争主義きょうそうしゅぎは儲けやすいですが、いきすぎると弊害がおきてきます。SDGsやダイバーシティ(多様性)といったキーワードが流行っていますが、時代に合わせてそういった路線で書道を見てみるといいのかもしれませんね。

  • 書道の教員免許や師範など、資格を取得すれば書道を仕事にできる?

    書道の教員免許や師範など、資格を取得すれば書道を仕事にできる?

    今の時代は、高等学校や大学を卒業しても正社員の仕事に就くことは難しく、アルバイトや派遣社員、契約社員の割合が増えています。

    就活を勝ち抜くにはこれまで以上に自分の能力を高め、他者との差別化が必要なのです。

    そこで、自分の能力を証明するものとして資格があります。

    では、書道に関係する資格を取得すれば書道を仕事にできるのでしょうか?

    高校「書道教員」

    書道に関係する職業で最も代表的なのが、高等学校の「書道教員」ではないでしょうか。

    しかし、大学で「書道科」を専攻して高等学校の書道教員を目指し、教員資格を取得したとしても書道教員の空席はほとんどありません。

    高等学校の数が減っていますし、芸術科目の「書道」を選択させる高校も減っているからです。

    もし、どうしても書道教員が諦められないのでしたら、国語科の免許も同時に取れる大学を選び、とりあえずは国語教員にもなれる保険を作っておきましょう。

    書道教室:肩書があれば弟子が集まる?

    書道の学習につきものといえば「競書雑誌」です。

    書道教室やグループ長の所属する会派が発行する競書に参加して、そこで定める級や段を与えられます。

    そして憧れの「師範」を取得することになります。

    師範を取得すると自分で書道教室を開くことができ、書道で収入を得ることもできます。

    書道教室が最高に盛り上がっていたのは昭和30年から40年代にかけてのようです。

    この頃は「団塊の世代」がちょうど小学生、習字を習う年頃でした。

    その地域で知られた家が習字教室を開くと、すぐにかなりの数の子供たちが集まったそうです。

    しかし、今は少子化に加え、習字の人気は高くありません。

    書道教室の経営だけで生活ができている教室の先生はかなり少ないのではないでしょうか。

    「師範」が書道の指導者の肩書にならない時代なのです。

    書道展の審査員をめざす

    師範などの資格を認可する会には別な序列が存在します。

    よく書家の肩書としてプロフィールに書かれている「〇〇書道会役員」などのことです。

    これらは個別の書道団体が主催する書道展での成績に基づいて決められるもので、会員・同人・審査員などのランクがあります。

    そしてその会を運営する中核の役員がいます。

    これとはまた別に、会派が加入する超大規模書道展の会員・審査員などのランクもあります。

    ここにも役員が存在して、日本の書壇のトップグループを形成しています。

    書道により強い魅力を感じ、さらに努力する弟子(多くのお金を恵んでくれる弟子)に囲まれるには、会派やその上の超大規模書道展の審査員にならなければいけない、と考える人は多いでしょう。

    そうでなければ、1つランクが上がるごとに年会費が倍近く上がることを我慢し続けることはできません。

    かつて書道にもっと人気があった時代には、これらの肩書が上であればあるほど良い弟子が集まりましたが、現在書道人口は減少して、全体のスケールが縮小してしまっています。

    そんな状況の中、枠が増え続ける審査員になれば必ずお弟子さんを持てるということは現実的ではなくなってしまっています。

    実際私の知っている範囲ですが、弟子として師匠につきながら書道展に出品し続けてきたけど費やす時間と出費が多すぎる、おまけに自分のお弟子さんもつかないということで書道界から身を引いたという話は何人も聞いています。

    こう考えると、書道業界の構成を見直すことや、書道をする人たちの目指すべきところなどの意識改革なども必要になってきますね。

    まとめ

    結論、書道を仕事にしてそれだけで生活していくのは難しいように思います。

    戦後すぐのころ、後に有名になる方々の多くがデパートの看板書きなどで職を得ていましたが、これは夢のまた夢。

    教書雑誌などでのランクアップがメインになり、手本写しで得る資格よりも、自分は何を目指しているのかを考えた方がよさそうです。

    自分は自分らしく、自分の書道作品を確立しなければなりません。

    そのためにはどのような学習をするべきか、先生とのかかわり方も考えたいです。

  • 書物の複製:臨・摹・硬黄・響搨・搨模・双鉤填墨・模勒上石

    書物の複製:臨・摹・硬黄・響搨・搨模・双鉤填墨・模勒上石

    現在のように写真機、印刷機のない時代、何かを写すには、書き写すほかにはありませんでした。

    昔の複製技法には全部でりん硬黄こうおう響搨きょうとう双鉤填墨そうこうてんぼく搨模とうも というものがあります。

    また、石に筆跡を記録することを模勒上石もこくじょうせきといいます。

    今回は、混用されやすいそれぞれの複製方法について解説していきます。

    それぞれの複製技法の確認

    二王(王羲之おうぎし王献之おうけんし)の書の真跡として伝わるものはありません。今、伝わっているものはすべて摸本もほんです。ただ、この摸本にもいろいろな種類があって、一様に摸本と言ってしまうわけにはいきません。

    むかしから真跡の摸本をつくるのに4つの技法があげられます。りん硬黄こうおう響搨きょうとうです。

    この4つの区別はそう張世南ちょうせいなんの「游宦紀聞ゆうかんきぶん」に見えている記事で、宋代以来はこの4つの方法が区別されていました。

    りんというのは原本をかたわらにおいて、その原本の書の大小、濃淡、形勢をよく観察してこれに似せて書くことです。

    それはちょうどふちのぞむという場合の臨と同じになります。

    これは和訓(日本読み)で「みうつし」と言っています。

    というのは、薄い紙を原本の上におおいかぶせ、原本の書の曲折に従って書くことを言います。

    和訓では「しきうつし」と言っています。

    硬黄

    硬黄こうおうというのは、黄蠟おうろう(ミツバチの巣から得たロウを精製したもの)を一面にぬりつけた紙を原本の上におおいかぶせ、敷き写すことを言います。

    黄蠟を一面にぬりつけると、紙が透明になり、細かい細部までも透かして見ることができます。

    古色を帯びた筆跡をうつすのに適しています。

    濡れた服がからだにぴたっとつくと肌が見えるのと同じ仕組みだと考えてもらっていいでしょう。

    響搨

    響搨きょうとうというのは、暗い部屋の内側に入り、窓に茶碗くらいの大きさの穴をあけ、その穴の上に法書とそれをうつしとる紙をあてて、外からの光線にすかして写しとるというものです。

    封筒の中身を光に照らして中身を見ようとすると、なんとなくわかりますよね。

    それと同じ仕組みです。

    和訓で「あかりうつし」と言っています。

    双鉤填墨

    しかし、ここまで紹介してきた4つの方法も、時代によって変遷へんせんがあったので、唐以前のものを見る場合にはこの区別がいくらか異なります。

    法書の摸本を作ることは、王羲之が生きていたころからすでに行われていました。

    それ以来、宋、斉、梁を通じて、模本の作られた例は、史上においてかなりの例を挙げることができます。

    その摸本を作るときに用いられた方法が、双鉤填墨そうこうてんぼくです。

    双鉤填墨とは

    双鉤填墨そうこうてんぼくというのは、原跡の上に透ける紙を敷いて、文字の輪郭をていねいにとって、内側に墨を原本どおりに入れていくことをいいます。

    そしてできたものは、輪郭をしっかりと取っているため、たんに敷き写したものに比べて、数段原本に近いものになり、写真のない時代にこれ以上の模写は考えられないものです。

    双鉤填墨はなぜ生まれたのか

    王羲之の書が素晴らしいと言われれば、それとそっくりの書が欲しい。書の手本として使いたいとなります。

    見て、写す、というのが1番手っ取り早いです。透ける紙が作れるようになると敷き写しをするようになります。

    それよりもっと本物に近いものを作ろうと考えて文字の輪を取り、本物とそっくりに墨を入れることを考えつきました。

    搨模について

    搨模とうもとは、双鉤填墨の技法を使って複製することを意味しています。

    また、搨本は法帖が模勒上石もこくじょうせき(石に筆跡を記録すること)されるようになってから、拓本を意味するようになり、碑帖に関する著録では、拓本のことを搨本と呼んでいます。

    模勒上石が行われるようになる唐以前の法書を言う場合の搨本搨模本の意味です。

    王羲之の蘭亭序は搨模で複製された

    有名な王羲之の「蘭亭序」は複製されたものがいくつか伝わっていますが、すべてが搨模で、双鉤填墨はありません。

    文字の輪郭をとるには文字が小さすぎます。

    いくつかある蘭亭序のうちの2種類をかぶせて比較してみると、どの帖も文字の形はきれいに重なります。

    しかしそれでも違うように見えるのは、写した人の筆癖、技量などが出てくるからです。

    よく私たちが見る「神龍半印本」がよいと言われますが、それははっきり見えるからであって、実は写した人の癖がもろに出ていると言われています。

    また、小楷といわれる小さい楷書も、小さすぎて輪郭をとることができません。

    敷き写しが取れないため、写した人の技量や、筆癖などが出てしまいます。

    そのため小楷は、王羲之の書といっても、数本ある墨跡本は筆意がみんな違います。

    王羲之の筆跡である「妹至帖まいしじょう」「姨母帖いぼじょう」「初月帖しょげつじょう」などは文字が大きめで、双鉤填墨で複製されたとしています。                                               

    複製の難しさ

    現代だとクリップやセロファンテープが原本の上に敷く紙のずれをなくしてくれます。

    かつてはこういった道具はないため、1行をずれないように写し取ることは不可能でした。

    2字、3字つづいている所はなんとかそのまま写しますが、続いていない部分は一息つくごとにずれが出ます。

    そのため、双鉤填墨でも、搨模でも、拓本になったものでも、字形は重なりますが行の並びは原本とは違っているということを覚えておきましょう。

    臨と模の違い

    臨と模は本来区別されるものであり、唐の虞世南ぐせいなん欧陽詢おうようじゅんなどの書家が、蘭亭序らんていじょなどをうつすときは臨であり、搨書人とうしょにんといった専門の職人がうつす場合は模と呼ぶのが正しいでしょう。

    しかし、現在私たちが見られる著録ではこの区別がかなり乱れています。

    臨模というキーワードが出てきたら、複製されたもの程度で受け止めておけばよいでしょう。

  • 篆刻のやり方:基本的な知識や技法を解説

    篆刻のやり方:基本的な知識や技法を解説

    普段書に親しんでいる人でも、篆刻となると難しそうだとしり込みしてしまう人も多いと思います。

    篆刻自体、非常に奥が深く、その本質を極めることは至難の業ですが、趣味としての篆刻は基本を学べば誰でも気軽に取り組め、楽しむことができます。

    今回は篆刻に必要な用具や技法を解説していきます。

    篆刻に使う用具紹介

    印刀

    印刀いんとうは書道における毛筆にあたります。そのため鉄筆ともいいます。

    中鋒(両刃)と偏鋒(片刃)がありますが、一般的には中鋒が使われます。

    ポイントとなる刃先の角度は、厚刃すぎると鈍重な、逆に薄刃にすると切れすぎて浮薄な感じになってしまいます。

    印刀は握る部分が円筒のものがよく、大きい方が刻するときに線が委縮しません。

    印刀が切れなくなったら砥石でときます。

    印刀の持ち方

    刀の持ち方は基本的には筆の持ち方と一緒です。

    親指と人差し指で持つのが〈単鉤たんこう法〉さらに中指を添えるのが〈双鉤そうこう法〉です。仮名などに用いる小さな印には単鉤法がいいでしょう。さらに大きな印には全部の指で刀をつかむ〈握刀あくとう法〉を用います。

    石印材

    篆刻の材料として石材が最も適しており、奏刀が自由で多様な表現ができます。

    石印材は現在おもに中国から輸入されています。

    印面に不純物がなく、ヒビのないものを選びましょう。

    印床(篆刻台)

    印床いんしょうとは、布字をするとき、印を刻るときに印材を固定する台のことを言います。

    初心者が印材を左手に持ち、右手で刻る場合、右手の集中力が石を握る左手にとられてしまうため、印象を使用することをお勧めします。

    くさび式とネジ式があり、ネジ式の方が便利です。また、木や竹などに刻るときも必要です。

    初めから印床を使わない人もいて、展覧会などに出品する大きめの印を刻る時にはあまり用いません。

    印泥(朱肉)

    印泥いんでいは水銀と硫黄を焼いて作った銀朱に、モグザとヒマシ油を混合したものです。中国製は繊維が細かく泥状になっています。いんでい印泥は水銀と硫黄を焼いて作った銀朱に、モグザとヒマシ油を混合したものです。中国製は繊維が細かく泥状になっています。

    高級品ほど腐りやすいため、時々ヘラでかき回して泥質を均等な状態にして使用しましょう。

    西泠印社せいれいいんしゃ製の「光明こうめい」「美麗びれい」が有名です。

    印箋

    印箋いんせんとは、印を押す用紙のことを言います。

    表面が均質で油をよく吸収する紙が最適です。

    枠が印刷された既製品もありますが、良いものは少なく、中国産の薄めの画仙紙を使うか、これらを素材にしたものがいいでしょう。

    印褥

    印褥いんじょくとは、印を押すときの台のことを言います。

    あまり弾力のあるものでは印はきれいには押せません。手鏡てかがみなどのガラス板の上に数枚の画仙紙をのせるのがちょうどいいです。

    印矩

    印矩いんくとは、印を押すときに、位置を決めるために用いる定規です。

    L字型・T字型が一般的です。

    また、通常1度押したら、色が薄かった時に2度目はズレてしまいます。しかし、印矩をつかえば印の位置が決まっていれば、同じ場所に2度重ね押しができます。

    筆・墨・硯

    筆は、墨用・朱墨用それぞれに穂先のきく小筆を1本ずつ用意します。一般的に中国製の写巻がよくつかわれます。

    墨は、普通のもので大丈夫です。朱墨は銀朱の純度の高い国産品が、印面へのノリもよく、おすすめです。

    硯は、印稿を作るときや布字のときに用い、墨用・朱墨用それぞれ必要ですので、二面硯があると便利です。

    そのほかの用具

    手鏡は布字(字入れ)の修正するときに使います。

    ブラシは刻した印面の石くずをはらうのに用います。

    紙やすり・耐水ペーパーは、印面を平らに整えるために使用します。600~800番。

    高校書道の授業では印面を平らに整える作業は難しいため先生の方であらかじめ済ましておいた方がよいです。

    印の形式紹介

    姓名印

    姓名印せいめいいんは個人の姓名を刻したもので、一般的には白文が用いられます。

    これは、秦漢以来の官私印が白文であったことに由来しています。

    雅号印

    雅号印がごういんは姓名印と連ねて押す落款印です。朱文が適当です。

    姓名印は正式である白文とするため配合上、朱文を用います。

    引首印

    引首印いんしゅいんは書幅の右上に押します。

    多くは長方形・長楕円形で好みの句や、堂号などを刻ります。

    主に白文印が使われます。

    姓名印・雅号印・引首印をまとめて三顆一組といいます。

    成語印

    成語印せいごいんは詩句名言などを刻するもので、現在作品として表現されるものの大半が、この形式です。

    収蔵印・鑑賞印

    書画骨董や書物の所蔵を明らかにしたり、また芸術作品を鑑賞しこれを誇り称えるものとして押されるものです。

    篆刻の作り方

    検字(字調べ)

    篆書は、使われていた時代、地域、用途によって字形が異なります。

    1つの印のなかに時代や地域が異なる文字を混用しては不自然なものになってしまします。

    それぞれの文字の特徴を理解し、正しく辞典を活用しなければいけません。

    専門知識が必要ですが、初心者にもわかりやすく編集された辞典を使いましょう。

    「標準篆刻篆書辞典」「標準清人篆隷辞典」「漢印文字彙編」

    印稿

    使う字形が決まったら、印面の構成を考えながら印稿を作ります。

    印稿用の台紙は、厚めのハガキ程度の大きさの紙が適当です。

    ハガキなどの台紙に墨を塗って真っ黒にします。乾いたら刻る印材を台紙に当て、鉛筆で印の大きさを正確に写します。

    朱文の場合は、朱墨で印の輪郭(鉛筆で書いた線)を書き、朱墨で文字を書きます。

    白文の場合は、鉛筆で書いた輪郭からはみでないよう、朱墨で内側を塗りつぶします。そのあとに刻る文字を黒色の墨で書いていきます。

    隣の文字との位置関係や全体の構成を考えながら、墨と朱墨を使って納得のいくまで何度も修正しましょう。

    印面を整える

    市販の印材は、一見平らに見えますが、切り傷があったり、ロウやワックスが塗ってあったりするので、紙やすりで必ず平らに整えましょう。

    同時表面に塗ってある蠟やワックスをとらないと、印面に布字するときに墨をはじいてしまします。

    紙やすりを使うときは平らな面の上で磨りましょう。

    印面は直角、水平でなければならないので、手鏡などの上に印材を置いてチェックします。人間の眼だけに頼ると実は斜めになっていることもあります。

    また、紙やすりを使うときは、印材を90度回転させ、この作業を印材が一回転するまでつづけます。力が一方にだけ偏らないようにしましょう。一方向だけでやすりをかけると、力の入れ具合の癖が出てうまくいきません。

    印材が平らで、側面が直角になっていれば、水で石粉を流して終了です。

    布字(字入れ)

    印稿をもとに、逆字(左字)で印面に字を書くことを布字ふじといいます。

    まず、印面に朱墨を均等に塗り、乾かします。

    乾いたら、印稿をもとに逆字(左字)で字を入れます。

    逆字なので、印面を手鏡をつかって右上がりになっていないかなど不備がないかをチェックしましょう。

    初めから文字を印面にいっぱい入れると、修正が難しくなります。

    転写

    転写は初心者に向いている字入れの方法です。

    初心者が上で紹介したような逆字(左字)で字入れするのはかなり難しいでしょう。

    しかし、印稿を雁皮紙がんぴし(薄い紙)で転写する方法をとれば、そうした苦労が省けます。

    まず、雁皮紙を印稿の上にのせて墨で転写します。

    転写した雁皮紙を、朱墨を塗った印材の上にあてて、少量の水で雁皮紙を濡らします。

    さらに半紙を上から当て、軽く指先でこすり雁皮紙の水気をとります。

    そしてまた乾いた半紙を雁皮紙の上に当てて、筆の頭などの固いものでよくこすります。

    充分にこすってから雁皮紙をはがし、転写しきれていない部分(文字が薄い部分)を補筆、修正します。

    運刀

    いよいよ石に文字を刻していきます。

    運刀法は大きく分けると、手前に引いて刻る〈引き刀〉と、突いて刻る〈突き刀〉があります。

    初心者の場合は突き刀の方が刻りやすいと思います。左手親指を添えると、突きやすいです。

    運刀の順序は筆順に順うのが普通ですが、あまり気にしなくて大丈夫です。

    補刀と撃辺

    刻り終えた作品は一度押印してみて、結果を見ながら不備があればそこに補刀ほとうを加え修正します。

    また、印の輪郭がきれいすぎるときは、印刀の横の刃ではない部分で軽くたたきます。これを撃辺げきへんといい、古いおもむきが出せます。

    強くたたきすぎると、印材が壊れてします恐れがあるので注意しましょう。

    押印

    印泥をつけるときは印材を押し付けるのではなく、軽くポンポンと叩くようにまんべんなく均等に印泥をつけます。

    印矩にあてて押し、同じ場所に重ねて押す場合は2回までにしましょう。3回も押すと印泥がかぶってしまい印影が重くなります。

    印を押すところをあらかじめ爪でこすっておくと、表面がつるつるになり、印泥のつきもよくなります。